【水野南北】食を慎むことで「陰徳」を積む

レストラン

腹八分目になったら残りは食べない、そうすることで陰徳を積むと南北は言います。

おいしい物があふれ、「もったいない」精神が浸透する現代日本で、残すというのはとても難しいです。

しかし腹八分目を過ぎた分だけ徳を失うというのは、私の体験上本当のことだと言えます。

徳は幸運のもとなので、徳が少ないと困難・苦労が増えます。

くれぐれも食べ過ぎ注意です。

食の慎みは陰徳である

(修身録一巻)

悪い因果を解消して良い因果を作るには、陰徳を積むしか方法がない。

慈善事業・動物愛護などは人の目に触れる行為であり、陰徳ではない。

本当の陰徳とは、日々の食べ物を半椀減らす行為である。

これは自分しか知らないから本当の陰徳なのだ。

毎回一口減らすことを継続するなら、自分の悪い因果・子孫の悪い因果を解消することは、月を指すほどに明らかなことである。

本当の施しとは、自分が食べる分を減らして施すこと

(修身録二巻)

「陰徳・陽徳を積むために放生(つかまえた生き物を逃がしてやること)をしたり、食・財を施して利益(りやく)があるか?」という問いに対する南北の答え

利益や見返りを求めて施しをすることは間違いだ。

(中略)

あなたは施すと言うけれども、何を施すと言うのか。

財は天下の回りものであって自分のものではないし、食物は施しを受ける人の持ち分である。

あなたは何を持っていて、何を施すと言うのか。

人が持っているのは食だけであり、これを施すことを本当の陰徳と言うのだ。

しかしお腹いっぱい食べる人の施しは施しではない。

それは施しを受ける人の取り分である。

満腹になるまで食べたいのを我慢して半椀分を施すならば、それこそ本当の施しであり大きな陰徳がある。

いつもそれができる人は本当の陰徳者である。

その徳はあまねく世界に満ちわたる。

このような人は短命・貧乏を長寿・福に変えてしまう。

あらゆる凶悪を滅ぼして、完全に無敵である。

腹八分目は陰徳である

(修身録二巻)

本当の陰徳とは、五穀が地面に落ちても気にしないで、腹八分目になったら残りは捨てる。

ほんの少しであっても物を無駄遣いせず、日々の徳を忘れないことが大切である。

陰徳を知らない人は、一粒の穀物が捨ててあるのを見てもったいないと思う。

しかしおいしい物だとお腹いっぱい食べてしまう。

一粒を捨てることをもったいないと思って食べる行為は、腹八分目を過ぎて一粒を無駄にしていることになるのに、それに気づかない。

腹八分目を過ぎて食べても利益などない。

体を壊して病気になるだけではないか。

このような人は明徳を損なう身の程知らずな人である。

お客としてごちそうを提供された時

(修身録二巻)

お客としてごちそうを出されることもあるだろう。

食べきれずに捨てるのはもったいないと思って、我慢して食べてしまう。

目の前の食べ物のことだけ考えてもったいないと思うのは間違いである。

誠ある人は食べずに捨ててしまう。

そうすることで陰徳を積み、慈悲を重ねるのだ。

食を捨てる時は、別の命を養うことになる。

表面的には食を粗末にするように見えるが、これは人に知られぬ行為であって、これこそ本当の陰徳である。

施すことは徳であり、その結果が戻ってくることを得と言う。

ゆえに施す行為は得の基本であり、有益である。

だから腹八分目になったら、たとえ一口でも食べないことで天地に陰徳を積むのだ。

食べ過ぎるとその分の徳はなくなってしまい、出世発展できない。

食べ過ぎにより日々徳を失った結果、貧乏になる人は多い。

物を浪費せず少しでも捨てる物を助ける行為によって、天地に陰徳を積むことができる。

これは人に知られぬ陰徳であり、ついには陽報がめぐって来て世の人の知るところとなる。

陰徳

徳には二種類あって、人に知られる陽徳と人に知られない陰徳があります。

私の体験上、陽徳(良いことをしても、それを人に言ってしまう)はたいしたことありません。

でも陰徳(良いことをしても、誰にも言わない)はかなり効果があります。

意志を強く持って、自分の善行について沈黙しましょう。(自分で書いてて、耳が痛い…)

大切なことなので繰り返しますが、陰徳は陽徳の何倍も効果があります。(見返りを求めたとしても)

良いことをしても人に言ってしまうと、エネルギー的にかなりのロスが生じます。

見返りを求めない方が良い、とどこかの記事で書いた気がしないでもないですが、陰徳は見返りを少し位求めてもちゃんとリターンがあります。

ただ執着すると良くないので、「リターンがあったらうれしいけど、なくても自分がしたかったからそれでいい」位の方が忘れた頃にドカンときます。

参考文献

(訳)玉井禮一郎「食は運命を左右する」たまいらぼ/1984年

若井朝彦「江戸時代の小食主義」花伝社/2018年